基本的に物置き

からから、がらがら

1.シナリオ概要

現代日本用、3人~4人向けのシナリオです。
泣きじゃくる赤ん坊を助けた探索者一行が、あれよあれよという間に奇怪な事件に巻き込まれてしまいます。
導入の舞台は深い森の中ですが、すぐに山小屋へと移行。内部の探索が重要となるクローズドサークル型です。
難易度はかなり低め。よほど突飛な行動を取らない限り、生還は容易でしょう。

2.あらすじ

山に遊びに来ていた探索者一行は、下山の途中に林の方角から赤ん坊の泣き声を聞き取る。
善意から、あるいは興味から音の発信源へ向かったものの、そこにあったのは若い女性の死体と泣きじゃくる赤ん坊の姿だった。
死体を調べていると、それはどうやら恐ろしく巨大な蛇の仕業らしいとわかる。
だがそれと確認した途端、探索者たちは突如出現した蛇の群れにより、山小屋へと追い込まれてしまう。

3.シナリオの背景

三野瀬 水帆(みのせ みずほ)は、北アメリカにて崇拝される蛇神『イグ(ルールブックp.206)』の崇拝者です。
幼いころから魔術に興味のあった彼女は、『ヴードゥー(アメリカなどの民間信仰)』を調べている内に、蛇神の存在へと行き当たりました。
彼女は信仰と生贄を持ってイグを崇拝し、イグはある種の貴重な魔術知識や、秘技や呪文を授けることによって答えます。この良好な従属関係は数年間に渡って続けられました。
ところがある日、欲に駆られた彼女は、北アメリカの草原に位置するイグの拠点の一つから、貴重な宝石を盗み出してしまいます。

「海を越え、日本にまで逃げてしまえば、蛇ごときに手出しは出来まい」

そう考えた彼女は、イグに窃盗がバレる前にと日本へ帰還します。
あまりに杜撰な方法であるものの、赤ん坊用のガラガラに宝石を隠し、輸送する……という手段で宝石を持ち帰ることにも成功しました。
ですが、蛇神はそう甘くはありません。彼女の潜伏する先々に配下の蛇たちが先回りし、死なない程度の毒で彼女を苦しめ続けます。
この蛇神は、身の程知らずな彼女に絶望と苦痛に満ちた死を与えようと考えていたのです。

毒に苦しみ、困り果てた三野瀬は宝石をイグへと返還し、赤ん坊を使った生贄の儀式を行うことで許しを請おうと考えます。
その決行当日。彼女は人の集まるキャンプ場から一人の赤ん坊を調達し、潜伏地の山小屋へと帰ろうとしました。

「これできっと、許してもらえるはず」

三野瀬はそう考え、安堵します。数週間の不安が一瞬治まり、喜の感情が最大限に昂ったその時、彼女の眼前に巨大な蛇が現れます。
イグの寵愛を受ける、聖なる蛇。この地域に生息する「ヤマカガシ」という蛇が巨大化したものでした。

急な出現に、赤ん坊を抱えて狼狽する三野瀬。その首筋に、ヤマカガシは容赦なくかぶり付きます。
途端に、彼女の血管を出血性の毒が駆け巡りました。
体中の血管が溶けて内出血が発生し、大きな出血斑が肢体を埋め尽くします。
その上、首筋の大きな噛み傷から、卵の黄身を割ったようにドロドロと血液が溢れでて、フードに血溜まりを作りました。
……幸運にも、赤ん坊は凄惨な血だまりを見る位置にはいませんでした。
ですが、自分を抱えているものの体温が消えていくのを感じ、わんわんと泣き喚きました。
その声を聞きつけた探索者たちが集まるのは、その数分後のことです。

裏切り者の始末を済ませた聖なる蛇は、宝石の捜索に入ります。
しかし、彼女のコートの下。
そこにある小さな『がらがら』の中に入れられた宝石に、聖なる蛇は気づくことはありませんでした。
彼らの感覚器官では、それを見極めることは出来なかったのです。

宝石を回収できなかったイグの聖なる蛇は考えます。
あるじを呼べば、宝石は簡単に回収されるだろう。
でも、こんなつまらぬ隠し事で、あるじの手を煩わせるのは忍びない……。

そんな考えごとをしていると、おやつにと残しておいた赤ん坊が人間たちを呼び寄せるのが目に入ります。
これは使える。そう考えた聖なる蛇は、彼らを三野瀬の隠れ家へと追い込むのでした。

4.登場NPC

三野瀬 水帆(みのせ みずほ)、25歳(故人)、身の程知らずな若者

あらすじに書いた通りの人物です。
非常に身勝手、かつ貪欲で自己中心的であり、万事自分の利益を再優先に考える傾向がありました。
山奥にですが別荘を持つような、そこそこのお金のある家庭に育ったようですが、残念ながら両親の苦労は報われませんでした。
「生贄にする前に、せめて名前くらいは教えてやろう」とわけの分からない理屈で、瑞葉に名前を教えていたようです。

牧瀬 瑞葉(まきせ みずは)、1歳2ヶ月、無邪気な赤ん坊

STR:3 DEX:3 INT:5
SIZ:4 CON:4 POW:3
HP:4 MP:3 SAN:15

無邪気な赤ん坊。ちなみに女の子。 色々と未成長なため、算出には探索者用(成人用のルール)は使用されていません。
幸運なことに現状があまり理解できておらず、神話生物を見ても宇宙的な事象に触れることはないようです(彼女に正気度喪失は発生しません)。

両親とともに思い出づくりのキャンプに訪れたところ、少し目が離れた隙に三野瀬に攫われてしまいました。
身に付けているもの--幼児服には『みずは』という名前がマジックで書かれています。
性格は無邪気で暢気。三野瀬のことは『みい』、母のことは『まあ』、父のことは『ぱあ』などと幼児言葉で呼びますが、
探索者が名前を教えた場合は、彼らの苗字か名前の最初の一文字(田中なら『たあ』、鈴木なら『すう』など)を取って呼びます。
名前を教えなければ『にい』『ねえ』、あるいは『じい』『ばあ』などと呼ぶことでしょう。子供は残酷なのです。
三野瀬の持っていたガラガラを気に入り、『がらがら』と呼び、振り鳴らすと無邪気に喜びます。
そのため、探索者がガラガラから引き離そうとすれば、泣き喚いて抵抗するでしょう。
イグの聖なる蛇については、しっぽの音から『からから』と呼んでいます。

イグの聖なる蛇(赤楝蛇)、不明(おそらくメス)、狡猾な長命蛇

STR:24 DEX:6 INT:21
SIZ:30 CON:19 POW:12
HP:25 MP:12

体当たり:25%、1d6ダメージ
噛みつく:85%、1d8+出血毒による逃れられない死

『聖なる蛇』とは、イグの寵愛を受けた特別な蛇の総称です。
彼らは一様に額に三日月のしるしを持ち、他の蛇よりもはるかに優れた体躯を持っています。
このシナリオに登場するのは、『赤楝蛇(ヤマカガシ)』の聖なる蛇です。
彼女の体長は、かなり大きなヤマカガシの2倍、3m近くあり、それでありながら素早く動くことが可能となっています(瞬発力であり、移動速度ではない)。
毒の強さも本物より増しており、噛まれれば最後、犠牲者は即座に全身の血管が崩壊、傷口から大量に出血して死に至ります。
また、尻尾にはガラガラ蛇のものに良く似た脱皮殻が残っており、動くときには『からから』と音を鳴らします。
詳細はルールブックの『イグ』のページを参照してください。

5.導入

山に遊びに来ていた探索者一行は、下山の途中に林の方角から赤ん坊の泣き声を聞き取ります。
彼らが林に踏み入っていくと、大きな木の影に座り込むような誰かの姿。
探索者が恐る恐る近寄ると、そこにいるのは女性で、赤ん坊を抱きかかえ……大量の血を流して死んでいることが分かります。
首の裏のフードに、首筋の傷口から流れたであろう、なみなみとした血だまりが出来ているのです。

彼女の顔は赤い斑点に覆われ、それは服から露出した足や腕にも共通です。
事態を知ってか知らずか、彼女の腕に抱えられた赤ん坊は『ぎゃあ、ぎゃあ』と泣き叫んでいます。
死体を目撃した探索者は『0/1d4』正気度を失います。

女性の死体を調べる

死体を調べることにより、情報を獲得することが可能です。 死体はフード付きの黒いコートの下にズボンを履いた女性であること。 ズボンのポケットに財布と鍵が入っており、どうやら「三野瀬 水帆」という名前らしいこと。 コートのアチラコチラが濡れており、まるで何かの舌が服をまさぐったかのようだが、コートの下までは濡れていないこと……などが分かります。
コートの下を調べれば、後述の「ガラガラ」を見つけることが可能です。

《目星》で調べる

首筋の傷は大きな噛み痕のようなものに見えます。
何か巨大な――例えば、クマやワニのような――動物に噛み付かれたのかもしれない、と考えるでしょう。
また、コートの下を調べていない場合、服の隙間からガラガラがこぼれかけていることに気づけます。

《医学》

死体を覆う赤い斑点は『紫斑』と呼ばれる内出血の痕だと考え、死因もそれだろうと考えます。 首筋からあふれる血液も、ヘビの出血性の毒ならば説明がつくかもしれないと。 ただし、それにしてはあまりにも――量がおかしい、そう感じるでしょう。

《生物学》

『ヤマカガシ』と呼ばれる蛇について思い当たります。
彼らはおとなしい蛇で、静かにしていれば人を襲うことは基本的にはありません。
しかし非常に強力な毒を持つ蛇であり、噛まれれば内出血や傷口から血液が溢れるなどの症状が起こります。
ただし、噛み痕の大きさからして、それは違うだろうとも考えます。噛み痕が大きすぎるのです。
この牙の大きさから推測されるヤマカガシのサイズは3mほど。
通常のヤマカガシの、特別大きな個体のさらに2倍のサイズです。

赤ん坊を調べる

「ふぎゃあ、ふぎゃあ」と泣きわめいています。
抱っこしてあげることにより落ち着かせることができるでしょう。
上手くあやすには、年齢*3のロールか『精神分析』が必要です。

また、彼女の名前が幼児服の端にマジック書きされていると気づけます。
それによれば、どうやら彼女は『みずは』という名前のようです。
あちこち調べれば、女の子だとも分かります。

《心理学》

幼児の心理などわかりようはありませんが、推察することは可能です。
おそらく、抱っこしていた女性の体温がなくなったことにより、不安で泣いているのでしょう。

《目星》

赤ん坊は何やら手を動かし、何かを握りたそうにしています。
視線の先には三野瀬のコート。その下にはガラガラがあります。
渡すか、鳴らしてあげると彼女は落ち着くでしょう。

がらがらを調べる

ブリキで作られた、少し古いガラガラです。
水玉模様のラベルで覆われており、切開痕はラベルを剥がさなければ確認出来ません。
振った場合、『ガラガラとしておかしい音ではない音』が鳴ります。

前述のとおり宝石が中には隠されているが、それとは知らずに瑞葉に気に入られているようです。
彼女はガラガラを壊されそうになると、ぎゃあぎゃあと泣き出してしまいます。

実のところ、このガラガラの中身を調べ、それを捨ててしまえば、あっさりと事件は解決します。
しかし、そうなると非常に退屈なセッションとなることでしょう。

《目星》

どこにでもありそうなガラガラだと分かります。
《アイデア》に成功すれば、少しお高いデパートのベビー用品コーナーで同じものを見たことがあると感じるでしょう。

調べ物終了後

探索者が『ガラガラ』『財布と鍵』を発見し、振りたがっていた技能ロールを終えた辺りで下記のイベントが発生します。
警察への通報などのためにその場を離れようとした探索者がいれば、処理を後回しにすると伝えておくといいでしょう。
彼は他の探索者たちが情報を確保したのち、蛇と遭遇したために先に戻ってきます。通報はつつがなく可能です(警察官が駆けつける頃には、その場に探索者はいないでしょうが……)。
またその場合、彼だけが役に立つ情報を得られなくなってしまうため、蛇に対する《目星》のチャンスに補正を掛けたりすると良いでしょう。
『額の三日月模様』に関する情報を先に与えてしまうのも良いかもしれません。

6.『からから、からから』

赤ん坊(瑞葉)が急に、『からから、からから』と嬉しそうに笑い始めます(彼女には、蛇が事態の原因とは分かっていません)。 探索者が何のことやらと首を傾げていると、「ああ、ああ」とその背後に指を差し向けます。 そこには蛇がいます。――恐ろしく巨大な――ジャングルの映像か、動物園か何かで見たような『巨大な蛇』の姿があるのです。 そしてそれは尻尾を振って『からから』と音を鳴らしつつ、探索者の方へとゆっくりと這いずり始めます。
探索者が元来た道へ戻ろうとするにも、蛇が足止めをするような位置に居座っており、そちらへは逃げられません。
必然的に、探索者たちは林の奥――何があるかも分からない方角――へと逃げることになるでしょう。
もしかすると、探索者たちは逃げたがらず、不自然な動作で蛇を刺激しないように考えるかもません。
その場合、聖なる蛇は体当たりを行い、無理にでも探索者たちを逃げさせ、山小屋へと追い込もうとします。

戦闘は好ましい解決手段ではありません。
探索者が執拗に蛇と戦いたがる場合、攻撃の無意味さと毒の危険性を警告する必要があるでしょう。
それでも戦闘しようとするのなら、聖なる蛇は目障りな人間を片付けてしまおうと考えます。

逃走中の出来事

蛇からの逃走は自動で成功します。 ただし、聖なる蛇は探索者の後を正確に、ぴったりと這いずって追いかけてきます。距離をとっても、どこかに隠れても同様です。 探索者がうかつな行動により聖なる蛇と接触してしまった場合、聖なる蛇は体当たりなどで攻撃し、自身の恐ろしさを教えこもうとするでしょう。
逃げた探索者の先では、様々な怪奇現象が起こります。
蛇の群れが行き先に立ち止まって自分たちを見据えていたり、木の上から数匹の蛇が降って来て、探索者を追う群れに加わったり……など。
もしかすると探索者は『ガラガラが原因ではないか?』と考えるかもしれません。
そういう時は《知識》をロールさせ、蛇の聴覚ではそんな音は聞き取れないと教えてあげるといいでしょう。

探索者側が『逃げ道を探すため、目星を行う』などの提案をすれば、この逃走劇は終わります。
《目星》に成功すれば、ちょうどいい場所に避難できそうな山小屋(実際は違うが)の姿が見当たるでしょう。
探索者が山小屋の存在を味方内に知らせると、聖なる蛇は這う足を早め、探索者たちに詰め寄ります。
蛇たちが獲物を小屋へと追い込むための、最後の行動です。

小屋に入るための判定には、全員が《DEX*5》でロールを行います。
成功したものが先行しドアを開ければ、全員が避難に成功する。

もしも全員失敗してしまった場合は、《幸運》をロールさせます。
成功すれば転んでしまうも上手く転がり、その探索者はなんとかドアの前へと辿り着けます。
それでも失敗すれば、誰かが聖なる蛇の《体当たり》を受けることになるでしょう。
いずれにせよ、次のラウンドでは山小屋へと辿り着くことが可能です。

7.古民家での探索

◆添付資料・どこかの古民家

写真素材は足成さん、フォントはるりいろフォントさんより使用させて頂いています。

山間部に位置する、山小屋にも見える一階建ての古民家が探索の舞台となります。
ガスや水道は通っておらず、無論 電線も引かれていません。
携帯の電波もここからは届かないでしょう。採光は窓からの明かりが主です。
各部屋には窓があり、カーテンも備え付けられています。
カーテンを開けば、どの部屋からでも外に控えている蛇たちの姿が見えるでしょう。
トイレやお風呂、シャワーなどはありません。外で済ませたり、キャンプ場のものを(勝手に)拝借したり、川を使ったりしているようです。

ちなみに、この古民家は三野瀬が親から受け継いだ遺産であり、隠し部屋は今は彼女しか知りません。
両親は既に(イグの手にはよらず)亡くなっています。

古民家内での時限イベント

時間経過により、イベントが発生します。
探索の制限時間を知らせるためのイベントとなっています。半分経過、全部経過の二種を用意。

時間が半分経過した場合

瑞葉を連れている探索者は、彼女が「からから、からから」と言ったことに気づきます。
《聞き耳》を行えば、確かに(リビング、または寝室)からその音が聞こえると感じるでしょう。
暖炉を灯していない場合、聖なる蛇が煙突を通して入り込んでいます。

そして(寝室に出現した場合、悠々とリビングに移動してから)リビングの掛け時計の文字盤を破壊し、探索者に何かを伝えるようにじっと見つめます。
明らかに知性を持って行動する蛇の姿を見た探索者は、『1/1d3』の正気度を失います。
聖なる蛇はそれを見届けると、再び寝室の煙突を通して帰っていくでしょう。

暖炉を灯していた場合、ヤマカガシの姿は見受けられません。
ですが、いつの間にか時計の文字盤が破壊され、どこかの時刻(制限時間の時刻)の数字が潰されていることに気づけます。

時間が全部経過した場合

指定された時刻を知らす音楽が、がらんがらんと鳴り響きます。
すると玄関のドアを悠々と破壊し、イグの聖なる蛇が現れるのです。
この時までに彼らが求めるものを見つけることが出来ていなければ、彼らは探索者を気絶させ、あるじの機嫌を宥めるために赤ん坊を攫って去っていきます。
探索者が病院で目覚めた時には、何もかもが既に終わった後でしょう。

8.リビングの探索

リビングには机と四人分の大人用の椅子がありますが、修繕されているのは一つのみです。
観葉植物もあったようですが、もはや単なる植木鉢に刺さった枯れ木と化してしまっています。
机はところどころ腐食しており、上に紙コップが置かれているのみです。
あまり人が暮らすのに良好な環境とは言えないでしょう。
奥にはカセットコンロにヤカン、水の入ったペットボトルが大量に買い置きされています。
壁には掛け時計が掛けられており、一時間置きに『ごーん、ごーん』と鳴り響きます。
この掛け時計の裏を調べる、もしくは取り外そうとすると、壁の中に埋め込まれるようにして設置されていると気づけます。
これは後述の仕掛けのための品物だからです(壁の中に色々仕掛けがあります)。
無理やり引き剥がそうとするなら、壊れてしまう可能性があるでしょう。

9.書斎の探索

書斎には本棚がいくらか用意されているが、ほとんどがらん堂です。
しかし、本棚を《目星》によって注意深く調べると、『八の下(植木鉢の下、という意味)』というメモを見つけることが可能です。

また床板を調べて回れば、一つの本棚の周囲にだけ埃が溜まっていないと気づけます。
これを動かせば、本棚のあった場所に隠し部屋への扉を見つけることが出来るでしょう、まだ開いてはおらず、解錠方法も不明ですが。
扉は地面に四角形の切れ目が入っているような構造になっており、スイッチを入れると下から持ち上がります。
持ち上がれば側面から窪みに手を入れ、引っ張りあげるようにして取り外すことができるでしょう。
なお、戻す時は上からガコンと嵌めてやれば収まります。

10.寝室の探索

寝室は案外広々としており、床の上に一枚の布団が敷かれています。
暖炉には焚き木が入っており、つい最近に使用された形跡があると分かるでしょう。
当然ながら煙突からは外部に通じる穴が開いており、蛇たちの侵入経路として優秀な場所です。
探索者が暖炉を灯せば、イグの配下たちはそこからの侵入が不可能となります。
そうしておけば後の強制イベントの際、知性ある蛇を目撃することによるSANチェックを回避出来るでしょう。

まくらを調べると、枕から数本の髪の毛を見つけることが出来ます。
茶色がかった髪の毛ですが、その色は染料によるものであり、ところどころ剥がれて黒い色が露出しています。
この髪の毛の色は、三野瀬のものと同一です。《アイデア》などでそれに気づけるでしょう。
これだけでは根拠として弱いかもしれないが、探索者に「ここは彼女の家では?」と疑問を抱かせるくらいは可能だと思われます。
また、ここには三野瀬の替えの服も用意されています。
《芸術》技能を持つ探索者なら、服のセンスが彼女のものと似ていると感じられるだろう。

11.倉庫の探索

倉庫には様々なガラクタが積み上がっています。
……というのは過剰で、燃料(カセットボンベ)、水、食料などがここに貯蔵されているのみです。
非常用の懐中電灯なども、ここに備えられているでしょう。

この部屋で最も重要なものは、二本の鍵付きの金庫です。 鍵の一本は三野瀬の死体から回収したもの、もう一本はリビングの観葉植物の鉢の下に隠されています。
《鍵開け》で解錠することも可能ですが、鍵穴は老朽化しており、どちらか片方でも失敗すれば鍵穴が解錠用具でふさがり、二度と開けられなくなってしまう可能性があるでしょう。

中にはメモ書きが入っており、『右に十一、左に五、最後に正しい馬に』とだけ書かれています。
これは掛け時計の短針を、『右回りに十一時に合わせ、左回りに五時に合わせ、最後に一二時(正午)に合わせろ』という指示書きです。
『午』を『馬』と読むことは、《知識》に成功した探索者が知っているでしょう。

針を決められた通りに動かせば、隠し部屋への扉が開きます。
『がこん』という音とともに、書斎の床板の一部が浮き上がるのです。
書斎の本棚を動かしていない場合は、『がっ……』と、書斎で何かが持ち上がりかけたような音がしたと気づけるかもしれません。
書斎に戻り、本棚を動かせばちゃんと開きます。浮き上がった床板を外すと、梯子が見えるでしょう。
当然ですが、瑞葉は一人では降りられないため、おぶって貰うなどの必要があります。

12.裏口の探索

民家の裏口。シナリオ内の位置付けとしては、緊迫感を保つためのトラップエリアとなっています。
曇りガラスの嵌まった窓を持つ扉からは、薄く曇った外の景色が見えます。
しかし《目星》で慎重に観察すれば、外側のドアノブのすぐ側に一匹の蛇が待機していると気づけるでしょう。

ここから脱出することも可能ですが、命の保証はありません。
探索者が『自分たちが蛇にこの家へ追い詰められた』ことを知っていれば、《アイデア》ロールを行います。
成功すれば、こんな出口を見逃すはずはないと気づけるでしょう。

もし、探索者がここから抜けだそうとした場合、ドアを開けた途端に一匹の蛇がドアノブを握る探索者の腕に噛み付きます。
攻撃は不意打ち扱いとなるため、回避は不可能です。噛み付かれた探索者は『1d3+POT7』のダメージを受けてしまいます。
対抗に失敗すれば、さらに30分の間 体がふらつき、思考能力が低下(全てのロールに-20%)してしまいます。
あまり使わないルールですが、POTの処理については、ルールブックの63ページを参照してください。

ロール終了後、それを皮切りにして、蛇たちが各地の隠れ場所から一斉に集まり、獲物の逃亡を阻止しようと試みます。
それでも逃げ出すようなら、蛇は林の外までは追ってこないでしょう。
無論、がらがらが山小屋に残されており、蛇たちが彼らを追う理由がなくなっていれば、の話ですが。

13.地下に隠されたもの

三野瀬の使用していた隠し部屋。
光が一切入らないため、当然のごとく真っ暗です。
暗い室内を探索すれば、椅子が一つと机が一つのセットがあり、その上にノートとメモがあると気づけます。
室内は魔術師の邸宅としては簡素なものですが、それはこの家が彼女にとって、単なる隠れ家に過ぎないからです。
この場所でそれ以外の品を見つけることは出来ません。

イグの研究ノート

黒のボールペンで神経質な文字が書き詰められています。

『ヴードゥーの司祭たちが崇める、蛇の神。彼はあらゆる地の蛇と通じ、あらゆる災厄を齎す』
『それは半人たちの神であり、北方の草原に住む人々の神であり、南方の人々が崇める――ケツァルコアトルやククルカンといった存在――それらと同一の神であった』
『彼は豊穣を齎すことも出来るが、異常に嫉妬深く、同時に執念深い。彼の怒りを買ったものが逃げ切ることなど、過去に一度もありえなかった』
『彼の元にあるものに手出しをしてはいけない。彼の力を疑ってはならない。彼以外の存在を崇拝してはならない』
『さもなくば彼はどこまでも執念深く追いかけ、最高の苦痛と死を持って愚かな行為に報いるだろう』
『彼の寵愛を受けしもの。遣わされる《三日月の聖なる蛇》はけして、獲物を逃がすことはない』

さらに、ノートの端には同じ筆跡のメモ書きが残されています。
「だが、それは昔話に過ぎない。所詮は蛇だ。海の向こうに逃げれば……」

知るべきでない知識を得た探索者は、《クトゥルフ神話に+2%》。『0/1』正気度を失います。

三野瀬のメモ書き

黒のボールペンで、乱れた文字が綴られています。
『私が盗みだしたものについて、蛇神さまがお怒りになっている』
『どこへ逃げても潜んでいる、あの蛇たち。あれは蛇神さまの配下なのだ。彼のものを盗んだ私に、神罰を下そうとしているのだ』
『もはや許しを請うしかない。逃げ場など初めからなかった。私は身の程を知らなすぎたんだ』
『生贄を捧げ、あの場所に隠したあれを返還し、三つ指をついて慈悲を請おう。生贄があれば、盗みの罪は許してもらえるはずだ』
『そうだ、きっと許してくださる。きっと、殺されずに済むはずだ。全力で慈悲を請えば、きっと、きっと……』

『いあ や かでぃ しゅ ぬ いぐ ら ふぐるう ける すな にれぎうふ いぐ ふたぐん』
『この呪文で、捧げた供物を受け取ってもらえるはずだ』

メモはそこで終わっています。

14.結末

探索者の決めた方法により、ガラガラ(の中の宝石)の返還さえ済ませれば事件は解決します。
聖なる蛇に捧げたなら、彼女の手によりその場にイグが呼び出され、宝石が手渡されることになるでしょう。
また、探索者たちがガラガラを置いて逃げ出せば、困った聖なる蛇によってイグが呼び出され、ガラガラから宝石が発見されることになるでしょう。
ただし、もしガラガラを持って逃げ出してしまえば、イグはどこまでも探索者たちを追い続けます。

『蛇神への供物』

聖なる蛇に手渡した場合、彼女はそれをジッと見つめたのち、からからと尻尾をこすり鳴らします。
もしくは、探索者が供物を用意して呪文を唱えた場合、その場に一陣の風が吹き、蛇たちの絨毯の中央にイグが現れます。
イグは供物の呪文を聞くと、探索者たちが捧げたものを取って帰っていくでしょう。
ただし、それが宝石でない場合、宝石(ガラガラ)所有者の首筋に毒を打ち込み、のたうち回る彼を放置の上、ガラガラの中の宝石を手にして帰っていく。

ガラガラの中身が見えていない場合、探索者たちに「幸運」をロールさせます。
誰かが成功すれば、イグはそれが宝石を入れたものであると理解し、無事に帰って行ってくれるでしょう。
しかし全員失敗してしまえば、イグは意味不明な品を捧げた愚か者に怒り、無作為に1d3人に軽い毒を打ち込んで気晴らしをします。
イグの毒が何を引き起こし、体験がどの程度の正気度を失わせるかはキーパーが決める。
ただし、どんな毒であろうと、探索者たちの抵抗が成功することは決してありません。 探索者が生きていれば、悶えている間にいつの間にかイグと蛇たちがいなくなり、ガラガラも無くなっていると気づけるでしょう。

赤ん坊を宝石に加えて生贄とした場合、イグは上機嫌で『おまけ』を受け取って帰っていきます。
彼女は探索者たちの名前を、そして「まあ、ぱあ(ママ、パパ)」と連呼し、手足をばたつかせ、助けを求めて泣き叫びます。
この泣き声を聞いた探索者は、罪悪感から正気度を1d3/1d8ポイント失います。
いずれにせよ、生贄にされたものが助かることはありません。探索者たちが気づいたころには、風の音だけが残されています。

15.エピローグ

蛇たちの恐怖から解放された探索者たちは、1d6正気度を回復します。
また、瑞葉を最後まで守り切った場合は、さらに1d2正気度を回復することが可能です。
無事に返還が完了すれば、蛇たちはもう用済みだ、と言わんばかりに自身の住処へと帰っていきます。
後には落ち葉の絨毯の広がった、綺麗な山の景色があるのみです。
山の麓には行方不明になった瑞葉を探している捜索隊と彼女の両親がおり、瑞葉が生きていれば帰還を喜ばれるでしょう。
両親は瑞葉を保護してくれた探索者たちに感謝し、お礼を言ってくれます。

捜索隊は瑞葉が見つかると、「これで後一人だな」などと世間話を始めます。
探索者たちが何のことかと尋ねると、こう答えるでしょう。
「林の中の、大きな木の影にですが……大量の血液と……女性の服だけが残っていたんですよ」
身の程知らずな彼女の死体がどこに消えてしまったかは、イグだけが知っています。

16.終わりに

蛇に追い回され、その後はゆっくりと探索するシナリオです。
オンセでは赤ん坊がかわいいと評判でしたが、オフセでは色々辛いかもしれません。
リアルに赤ん坊の泣き真似をしたりすると たぶんドン引かれますので、その辺はなんか頑張ってください。

なお、毒に関する描写は非常に無茶と無知と無謀が入り混じったものになっておりますので、ご注意ください。
詳しい方がいて誤りを指摘されたら、ぶっちゃけて「このシナリオではこういうことなんだ」と教えてしまう必要があるかもしれません。

何かありましたら、ツイッターまたはWeb拍手でどうぞ。

◆質問と回答のまとめ

Q.制限時間とは、おおまかにどのくらいですか?

このシナリオに限らず、制限時間はその卓のキーパーさんが決めるものになっています。
そういうことで、そちらの見落としではなく、実際制限時間は載っていないです。
なお、参考という形になりますが、私の場合は全体の進行に5~6時間は必要と見積り、探索に使える時間は4時間程度とし、探索開始から4時間経過を制限時間として定めていました(オンラインセッションでの話です)。