足成さん、フォントはるりいろフォントさんより使用させて頂いています。
山間部に位置する、山小屋にも見える一階建ての古民家が探索の舞台となります。
ガスや水道は通っておらず、無論 電線も引かれていません。
携帯の電波もここからは届かないでしょう。採光は窓からの明かりが主です。
各部屋には窓があり、カーテンも備え付けられています。
カーテンを開けば、どの部屋からでも外に控えている蛇たちの姿が見えるでしょう。
トイレやお風呂、シャワーなどはありません。外で済ませたり、キャンプ場のものを(勝手に)拝借したり、川を使ったりしているようです。
ちなみに、この古民家は三野瀬が親から受け継いだ遺産であり、隠し部屋は今は彼女しか知りません。
両親は既に(イグの手にはよらず)亡くなっています。
時間経過により、イベントが発生します。
探索の制限時間を知らせるためのイベントとなっています。半分経過、全部経過の二種を用意。
瑞葉を連れている探索者は、彼女が「からから、からから」と言ったことに気づきます。
《聞き耳》を行えば、確かに(リビング、または寝室)からその音が聞こえると感じるでしょう。
暖炉を灯していない場合、聖なる蛇が煙突を通して入り込んでいます。
そして(寝室に出現した場合、悠々とリビングに移動してから)リビングの掛け時計の文字盤を破壊し、探索者に何かを伝えるようにじっと見つめます。
明らかに知性を持って行動する蛇の姿を見た探索者は、『1/1d3』の正気度を失います。
聖なる蛇はそれを見届けると、再び寝室の煙突を通して帰っていくでしょう。
暖炉を灯していた場合、ヤマカガシの姿は見受けられません。
ですが、いつの間にか時計の文字盤が破壊され、どこかの時刻(制限時間の時刻)の数字が潰されていることに気づけます。
指定された時刻を知らす音楽が、がらんがらんと鳴り響きます。
すると玄関のドアを悠々と破壊し、イグの聖なる蛇が現れるのです。
この時までに彼らが求めるものを見つけることが出来ていなければ、彼らは探索者を気絶させ、あるじの機嫌を宥めるために赤ん坊を攫って去っていきます。
探索者が病院で目覚めた時には、何もかもが既に終わった後でしょう。
リビングには机と四人分の大人用の椅子がありますが、修繕されているのは一つのみです。
観葉植物もあったようですが、もはや単なる植木鉢に刺さった枯れ木と化してしまっています。
机はところどころ腐食しており、上に紙コップが置かれているのみです。
あまり人が暮らすのに良好な環境とは言えないでしょう。
奥にはカセットコンロにヤカン、水の入ったペットボトルが大量に買い置きされています。
壁には掛け時計が掛けられており、一時間置きに『ごーん、ごーん』と鳴り響きます。
この掛け時計の裏を調べる、もしくは取り外そうとすると、壁の中に埋め込まれるようにして設置されていると気づけます。
これは後述の仕掛けのための品物だからです(壁の中に色々仕掛けがあります)。
無理やり引き剥がそうとするなら、壊れてしまう可能性があるでしょう。
書斎には本棚がいくらか用意されているが、ほとんどがらん堂です。
しかし、本棚を《目星》によって注意深く調べると、『八の下(植木鉢の下、という意味)』というメモを見つけることが可能です。
また床板を調べて回れば、一つの本棚の周囲にだけ埃が溜まっていないと気づけます。
これを動かせば、本棚のあった場所に隠し部屋への扉を見つけることが出来るでしょう、まだ開いてはおらず、解錠方法も不明ですが。
扉は地面に四角形の切れ目が入っているような構造になっており、スイッチを入れると下から持ち上がります。
持ち上がれば側面から窪みに手を入れ、引っ張りあげるようにして取り外すことができるでしょう。
なお、戻す時は上からガコンと嵌めてやれば収まります。
寝室は案外広々としており、床の上に一枚の布団が敷かれています。
暖炉には焚き木が入っており、つい最近に使用された形跡があると分かるでしょう。
当然ながら煙突からは外部に通じる穴が開いており、蛇たちの侵入経路として優秀な場所です。
探索者が暖炉を灯せば、イグの配下たちはそこからの侵入が不可能となります。
そうしておけば後の強制イベントの際、知性ある蛇を目撃することによるSANチェックを回避出来るでしょう。
まくらを調べると、枕から数本の髪の毛を見つけることが出来ます。
茶色がかった髪の毛ですが、その色は染料によるものであり、ところどころ剥がれて黒い色が露出しています。
この髪の毛の色は、三野瀬のものと同一です。注目してみればそれに気づけるでしょう。
これだけでは根拠として弱いかもしれませんが、探索者に「ここは彼女の家では?」と疑問を抱かせるくらいは可能だと思われます。
また、ここには三野瀬の替えの服も用意されています。
《芸術》技能を持つ探索者なら、服のセンスが彼女のものと似ていると感じられるでしょう。
倉庫には様々なガラクタが積み上がっています。
……というのは過剰で、燃料(カセットボンベ)、水、食料などがここに貯蔵されているのみです。
非常用の懐中電灯なども、ここに備えられているでしょう。
この部屋で最も重要なものは、二本の鍵付きの金庫です。 鍵の一本は三野瀬の死体から回収したもの、もう一本はリビングの観葉植物の鉢の下に隠されています。
《鍵開け》で解錠することも可能ですが、鍵穴は老朽化しており、どちらか片方でも失敗すれば鍵穴が解錠用具でふさがり、二度と開けられなくなってしまう可能性があるでしょう。
中にはメモ書きが入っており、『右に十一、左に五、最後に正しい馬に』とだけ書かれています。
これは掛け時計の短針を、『右回りに十一時に合わせ、左回りに五時に合わせ、最後に一二時(正午)に合わせろ』という指示書きです。
『午』を『馬』と読むことは、《知識》に成功した探索者が知っているでしょう。
針を決められた通りに動かせば、隠し部屋への扉が開きます。
『がこん』という音とともに、書斎の床板の一部が浮き上がるのです。
書斎の本棚を動かしていない場合は、『がっ……』と、書斎で何かが持ち上がりかけたような音がしたと気づけるかもしれません。
書斎に戻り、本棚を動かせばちゃんと開きます。浮き上がった床板を外すと、梯子が見えるでしょう。
当然ですが、瑞葉は一人では降りられないため、おぶって貰うなどの必要があります。
民家の裏口。シナリオ内の位置付けとしては、緊迫感を保つためのトラップエリアとなっています。
曇りガラスの嵌まった窓を持つ扉からは、薄く曇った外の景色が見えます。
しかし《目星》で慎重に観察すれば、外側のドアノブのすぐ側に一匹の蛇が待機していると気づけるでしょう。
ここから脱出することも可能ですが、命の保証はありません。
探索者が『自分たちが蛇にこの家へ追い詰められた』ことを知っていれば、《アイデア》ロールを行います。
成功すれば、こんな出口を見逃すはずはないと気づけるでしょう。
もし、探索者がここから抜けだそうとした場合、ドアを開けた途端に一匹の蛇がドアノブを握る探索者の腕に噛み付きます。
攻撃は不意打ち扱いとなるため、回避は不可能です。噛み付かれた探索者は『1d3+POT7』のダメージを受けてしまいます。
対抗に失敗すれば、さらに30分の間 体がふらつき、思考能力が低下(全てのロールに-20%)してしまいます。
あまり使わないルールですが、POTの処理については、ルールブックの63ページを参照してください。
ロール終了後、それを皮切りにして、蛇たちが各地の隠れ場所から一斉に集まり、獲物の逃亡を阻止しようと試みます。
それでも逃げ出すようなら、蛇は林の外までは追ってこないでしょう。
無論、がらがらが山小屋に残されており、蛇たちが彼らを追う理由がなくなっていれば、の話ですが。
三野瀬の使用していた隠し部屋。
光が一切入らないため、当然のごとく真っ暗です。
暗い室内を探索すれば、椅子が一つと机が一つのセットがあり、その上にノートとメモがあると気づけます。
室内は魔術師の邸宅としては簡素なものですが、それはこの家が彼女にとって、単なる隠れ家に過ぎないからです。
この場所でそれ以外の品を見つけることは出来ません。
黒のボールペンで神経質な文字が書き詰められています。
『ヴードゥーの司祭たちが崇める、蛇の神。彼はあらゆる地の蛇と通じ、あらゆる災厄を齎す』
『それは半人たちの神であり、北方の草原に住む人々の神であり、南方の人々が崇める――ケツァルコアトルやククルカンといった存在――それらと同一の神であった』
『彼は豊穣を齎すことも出来るが、異常に嫉妬深く、同時に執念深い。彼の怒りを買ったものが逃げ切ることなど、過去に一度もありえなかった』
『彼の元にあるものに手出しをしてはいけない。彼の力を疑ってはならない。彼以外の存在を崇拝してはならない』
『さもなくば彼はどこまでも執念深く追いかけ、最高の苦痛と死を持って愚かな行為に報いるだろう』
『彼の寵愛を受けしもの。遣わされる《三日月の聖なる蛇》はけして、獲物を逃がすことはない』
さらに、ノートの端には同じ筆跡のメモ書きが残されています。
「だが、それは昔話に過ぎない。所詮は蛇だ。海の向こうに逃げれば……」
知るべきでない知識を得た探索者は、《クトゥルフ神話に+2%》。『0/1』正気度を失います。
黒のボールペンで、乱れた文字が綴られています。
『私が盗みだしたものについて、蛇神さまがお怒りになっている』
『どこへ逃げても潜んでいる、あの蛇たち。あれは蛇神さまの配下なのだ。彼のものを盗んだ私に、神罰を下そうとしているのだ』
『もはや許しを請うしかない。逃げ場など初めからなかった。私は身の程を知らなすぎたんだ』
『生贄を捧げ、あの場所に隠したあれを返還し、三つ指をついて慈悲を請おう。生贄があれば、盗みの罪は許してもらえるはずだ』
『そうだ、きっと許してくださる。きっと、殺されずに済むはずだ。全力で慈悲を請えば、きっと、きっと……』
『いあ や かでぃ しゅ ぬ いぐ ら ふぐるう ける すな にれぎうふ いぐ ふたぐん』
『この呪文で、捧げた供物を受け取ってもらえるはずだ』
メモはそこで終わっています。
探索者の決めた方法により、ガラガラ(の中の宝石)の返還さえ済ませれば事件は解決します。
聖なる蛇に捧げたなら、彼女の手によりその場にイグが呼び出され、宝石が手渡されることになるでしょう。
また、探索者たちがガラガラを置いて逃げ出せば、困った聖なる蛇によってイグが呼び出され、ガラガラから宝石が発見されることになるでしょう。
ただし、もしガラガラを持って逃げ出してしまえば、イグはどこまでも探索者たちを追い続けます。
聖なる蛇に手渡した場合、彼女はそれをジッと見つめたのち、からからと尻尾をこすり鳴らします。
もしくは、探索者が供物を用意して呪文を唱えた場合、その場に一陣の風が吹き、蛇たちの絨毯の中央にイグが現れます。
イグは供物の呪文を聞くと、探索者たちが捧げたものを取って帰っていくでしょう。
ただし、それが宝石でない場合、宝石(ガラガラ)所有者の首筋に毒を打ち込み、のたうち回る彼を放置の上、ガラガラの中の宝石を手にして帰っていく。
ガラガラの中身が見えていない場合、探索者たちに「幸運」をロールさせます。
誰かが成功すれば、イグはそれが宝石を入れたものであると理解し、無事に帰って行ってくれるでしょう。
しかし全員失敗してしまえば、イグは意味不明な品を捧げた愚か者に怒り、無作為に1d3人に軽い毒を打ち込んで気晴らしをします。
イグの毒が何を引き起こし、体験がどの程度の正気度を失わせるかはキーパーが決める。
ただし、どんな毒であろうと、探索者たちの抵抗が成功することは決してありません。 探索者が生きていれば、悶えている間にいつの間にかイグと蛇たちがいなくなり、ガラガラも無くなっていると気づけるでしょう。
赤ん坊を宝石に加えて生贄とした場合、イグは上機嫌で『おまけ』を受け取って帰っていきます。
彼女は探索者たちの名前を、そして「まあ、ぱあ(ママ、パパ)」と連呼し、手足をばたつかせ、助けを求めて泣き叫びます。
この泣き声を聞いた探索者は、罪悪感から正気度を1d3/1d8ポイント失います。
いずれにせよ、生贄にされたものが助かることはありません。探索者たちが気づいたころには、風の音だけが残されています。
蛇たちの恐怖から解放された探索者たちは、1d6正気度を回復します。
また、瑞葉を最後まで守り切った場合は、さらに1d2正気度を回復することが可能です。
無事に返還が完了すれば、蛇たちはもう用済みだ、と言わんばかりに自身の住処へと帰っていきます。
後には落ち葉の絨毯の広がった、綺麗な山の景色があるのみです。
山の麓には行方不明になった瑞葉を探している捜索隊と彼女の両親がおり、瑞葉が生きていれば帰還を喜ばれるでしょう。
両親は瑞葉を保護してくれた探索者たちに感謝し、お礼を言ってくれます。
捜索隊は瑞葉が見つかると、「これで後一人だな」などと世間話を始めます。
探索者たちが何のことかと尋ねると、こう答えるでしょう。
「林の中の、大きな木の影にですが……大量の血液と……女性の服だけが残っていたんですよ」
身の程知らずな彼女の死体がどこに消えてしまったかは、イグだけが知っています。
蛇に追い回され、その後はゆっくりと探索するシナリオです。
オンセでは赤ん坊がかわいいと評判でしたが、オフセでは色々辛いかもしれません。
リアルに赤ん坊の泣き真似をしたりすると たぶんドン引かれますので、その辺はなんか頑張ってください。
なお、毒に関する描写は非常に無茶と無知と無謀が入り混じったものになっておりますので、ご注意ください。
詳しい方がいて誤りを指摘されたら、ぶっちゃけて「このシナリオではこういうことなんだ」と教えてしまう必要があるかもしれません。
何かありましたら、ツイッターまたはWeb拍手でどうぞ。
このシナリオに限らず、制限時間はその卓のキーパーさんが決めるものになっています。
そういうことで、そちらの見落としではなく、実際制限時間は載っていないです。
なお、参考という形になりますが、私の場合は全体の進行に5~6時間は必要と見積り、探索に使える時間は4時間程度とし、探索開始から4時間経過を制限時間として定めていました(オンラインセッションでの話です)。