足成さんのもの、 フォントはるりいろフォントを使用させて頂いています。
※クリックで大きくなります。『KP用』は梯子の位置を記載しています。
シナリオ内で梯子が発見され次第、そちらへ差し替えてください。
画像サイズが小さいため、2倍くらいに拡大して使用されることを推奨します。
◆KP用
◆PL用
写真素材は、CC2.0下の Klearchos Kapoutsisさんの素材を あやえも研究所さんが加工したもの、 フォントはるりいろフォントと ほにゃ字Reを使用させて頂いています。
※クリックで大きくなります。『KP用』はイベントポイントを記載しています。
また、洞窟内の探索のため、探索者の視界を制限(マップ上にマスクを掛け、PCに見えない位置のマップをPLに見えなくする)ことを推奨します。
◆KP用
◆PL用
山倉の叫び声を探索者たちが聞きつけたところから、シナリオはスタートします。
伊津坂駅のホームは一つだけで、右手側から上り電車、左手側に下り電車が到着するようになっています。
下り電車から降りた探索者には、山倉の姿が目に映ることでしょう。
彼は呂律の回らない言葉で駅員に怒鳴りながら、幼児のように腕を振り回して駅員(小此木)を振り払おうとしています。
駅員を涙目にさせている知人を止めようと、探索者が彼の元へ近づくと、彼は何やら意味深なことを叫びます。
「……誘拐犯だよ! 誘拐犯が、俺の、部下を、だな! ……ぅぷっ」
それに対し駅員は、危ないのでとにかく線路からホームへ戻るように言い続けます。
山倉から話を聞き出すには、彼を落ち着かせなければなりません。
探索者が水を飲ませたり、引っ叩いたり、あるいはアルコールを吐き出して貰ったりすれば、山倉から話を聞くことが出来ます。
その際、落ち着いて話せるように、と小此木は彼らを駅員室へと案内します。
山倉の話の内容は以下のとおりです。
・三軒目の飲み屋を出て、武田と別れると悲鳴が聞こえた。
・振り返ると、汚いボロ布をまとった二人組が武田を抱え、走り去っていった。
・もちろん追いかけるも、足取りが覚束なく、彼らが線路脇の金網を越えていったせいで追うことが出来なかった。
・彼らはトンネルに入っていった。線路の上を走っていけば追いかけられると思い、切符を買って駅に入った。
・だが、線路に飛び降りて追いかけようとしたところで、小此木に止められてしまった。
山倉の話には整合性が無かったり、同じ話題を何度も挟んだり、といった泥酔者特有の混乱が見られます。
彼のことを信用するのは探索者の自由ですが、駅員の小此木はそんな彼をうさんくさく感じています。
これは、警察などの第三者へ探索者が通報した場合も同様です。
忙しい警察は、酔っぱらいだけが目撃した誘拐事件、といった戯言は相手にしてくれません。
『彼を信じ、武田を救うために行動する』という選択が出来るのは、探索者たちだけなのです。
彼の話によれば、誘拐犯たちはトンネルへと向かっていったとのこと。
しかし、トンネルを探索するためには、目の前の駅員を何とかして味方につけなければなりません。
何かしらの根拠を探索者が提示した場合、いくらかのボーナスを付けての《説得》(山倉の話に、ある程度の信憑性があると納得させる)。
根拠がない場合は《言いくるめ》(弱気な性格な小此木を騙し、なあなあで調査に向かうことを許可させる)や《魅惑》により、彼を味方につけることが可能です。
小此木と探索に行くことになった場合、彼は出発前に『保線用車両』を一時的に停止するように高木へ連絡します。
探索者が『保線用車両』に興味を持たなかった場合、小此木は「保線用車両は……あっ! 保線用車両っていうのはですね、深夜の……」といったように、どうでもいい薀蓄や知識を混ぜ込んだ話を無理やり聞かせようとします。
新人駅員の彼は、自分の知識をお客さんに披露してみたかったのです。
ここで『保線用車両』を印象づけることは、後々の展開のためにかなり重要となります。
『保線』とは、電車が正常に運行するために行われる作業のことです。
弥代線では、日中は3人1組のチームが巡回、レールに異常がないか確認しています。
夜間になり通常の運行が停止すると、終点付近(伊津坂駅付近)から保線用車両が通常の線路へ乗り入れ、車両に取り付けられたカメラで異常を確認。 何か問題があれば、深夜に勤務している駅員が現場に向かい、補修が行われる……というものです。
なお、保線車両は最新技術により無人の運行が可能で、車体の重量は50トンにも及びます。
(このシナリオに必要な設定です。詳しい方へは『このシナリオではこういう設定なんです』と納得していただきましょう)
また、彼の使っている無線機は業務用の特別製であり、トンネルの中からでも伊津坂駅と通信が可能です。
伊津坂駅からトンネルまで、おおよそ500mほど。徒歩での所要時間は6分程度です。
二本のレールが並んだ道筋の両端は、3mほどの高さの金網で仕切られており、迂闊に侵入することは出来なくなっています。
レール上の探索者は、武田の痕跡を見つけるため、《目星》などのロールを求めるかもしれません。
しかし、レールの下には枕木や砂利が敷き詰められているため、足跡などは見つけられないでしょう。
代わりに、探索者たちが線路脇の金網を調べれば、ボロ布のようなものを見つけます。
それはただの布切れに見えますが、臭いを嗅いでみれば不審な点に気づけるでしょう。強烈に獣臭いのです。
トンネル内は円柱形の構造になっており、二本の幅の開いた《上り・下り》のレール。その両脇に、人間が通るための3mほどの幅の通路が用意されています。
探索者が正当な手続きでトンネル内に入った場合、内部は電灯によって照らされており、マイナスの補正を受けることはありません。
内部には監視カメラがついていますが、数時間ほど前に電線が故障しており、現在は復旧の工事が予定されている、と小此木から教えて貰えます。
破壊したのは当然ながら食屍鬼の一団です。彼らは地中にあった送電ケーブルを切断し、カメラが録画を停止している間に破壊してしまったのです。
探索者たちがカメラの映像を見せてもらったとしても、不審なものごとは映っておらず、無駄骨に終わってしまいます。
探索者が《心理学》に成功すれば、トンネル内の小此木は、どこか怯えたような様子に見えます。
彼に尋ね、《言いくるめ》や《魅惑》に成功すれば、彼ら駅員に伝わる怪談について聞き出すことが可能です。
・100年ほど昔、さる貴族が当時東京で導入されたばかりの『地下貨物列車』に似た設備を、自分の力を誇示するためにこの町で作ろうとした。
・技術不足で実現する見込みは無かったが、彼に異議を唱えられる人はおらず、計画は進められた。成功率を補うため、『人柱』が埋まられたとの噂もあるという。
・計画は1年ほど続いたが、トンネルが全く掘り進められずに頓挫。現在は入り口も封鎖され、地下に出口のない空洞が生まれるだけに終わった。
・その空洞は、どうやら地下鉄のトンネルのさらに地下に残されているらしい。
・『人柱』に埋められたのは、多くが攫われた子供だった。
彼らの父親が残る人生の間、子供を探し続けたという話もあるとかないとか。
単なる噂話ですが、『空洞』は実在します。探索者が床に目を向けるためのヒントになるでしょう。
両幅の通路に着目すれば、かすれた汚れのようなものが残っていると気づきます。
INTロール《アイデア》に成功すれば、それがまるで二人がかりで一人の人間を間にいれて運んだような幅になっていることが分かるでしょう。足跡は途中で消えてしまっています。
トンネル深部に進むと、小此木が停止します。これ以上進めば、次の駅『夜見野』へ出てしまうというのです。
そちら側には、また別のカメラが設置されており、故障もしていません。なので、探索者たちがこれ以上奥へ進んでも意味が無い、と言うのです。
彼の言葉どおり、そちらのカメラは故障しておらず、録画記録にも不審人物は写っていません。
もしも本当に誘拐犯が入っていったのなら、ここまでに誰もいなかった以上、そちらに写っているはずだというのです。
確かに、一部は小此木の言うとおりです。ですが謎の足跡など、説明のつかない出来事は残されています。
小此木は調査を打ち切ろうとしますが、探索者たちが調査を続けたいといえば、時間制限付きでしぶしぶながら受け入れてくれます。
彼自身、本当に誰かが捕まっている可能性があるのなら、調査を済ませたいという気持ちはあるのです。
探索者が床に着目し、《目星》で調査を続ければ、床板の一部に小さな亀裂が入っていることに気づけます。
それは円形に広がっており、隙間に鉄の棒などを押し込んで、テコの原理で持ち上げれば、蓋の役割を果たしていたことに気づけます。
中から現れたのは、強烈な腐臭と、ぼろぼろになった縄梯子です。姿なき誘拐犯は、もしかすればここに入っていったのかもしれません。
探索者はここで、警察へ十分な証拠を持って通報する、という手段を取ることも出来ます。
ですが、それには時間が必要です。誘拐された武田が、手をこまねいている間に殺されない保障は何一つ無いのです。
別添の地図を参照しながらお読みください。
地下空洞へ足を踏み入れた探索者は、まずは内部が思ったより明るいことに気づくでしょう。
天井までを照らすほどではありませんが、地下には僅かな明かりが灯されています。
足元を見てみれば、電池式の卓上ライトが動いていることに気づけます。
こちらは見るからにボロボロで、おそらくどこかに捨てられたものだろうと考えられます。
空洞内部はこのようなライトがいくつか点灯しており、薄ぼんやりと明るくなっています。
そのため、探索者が懐中電灯を点けながら探索したとしても、即座に食屍鬼たちに発見されることはありません。
降りた場所の正面には壁、少し右手側に奥への通路が見られますが……
探索者たちが何か一つ行動を済ませたところで、《聞き耳》をロール。成功した探索者は、『ぺたぺた』とゴムのスリッパのような足音が聞こえます。
全員が失敗すれば、先頭の探索者は角から出てきた食屍鬼と顔合わせしてしまうでしょう。
そうなってしまった場合、《隠密》《隠れる》で上手に身を隠すか、あるいは食屍鬼を無音に排除しなければなりません。
誰も身を乗り出さなければ、壁の裏側に隠れるだけで済むでしょう。
発見された探索者だけを囮に使う、というのも良い選択でしょう。
空洞内部で捕まった探索者は、食屍鬼たちの監視のもと、武田と同じ部屋に軟禁されることになります。
捕まった探索者は、ガグへの生け贄とされる前に《つまみ食い》される可能性が1時間につき30%あります。
《つまみ食い》された場合、1d4ポイントのHPと1/1d10正気度を喪失します。
四方を怪物に囲まれ、体の一部を喰われるという現実が、このまま全身を喰われるかもしれないという恐怖を生むのです。
無事に身を隠した探索者は、壁から顔を出して奥の様子を伺うことも出来ます。
奥から現れた存在は、人間によく似た体の構造をしています。ですが、極端な猫背のように身を前に屈め、口元が犬めいて裂けているのを見てしまうと、それが本能的に忌まわしく、人間とはかけ離れた存在に思えます。
陰険な両目は嫌悪感を浮かばせ、指先は鋭い鉤爪状に変形しており、それが危険性のある存在であることを否応なく認識させます。
足元が蹄のように割れていますが、足のみならず全身がゴムのように薄気味悪い質感をしており、『ぺたり』と異質な足音を鳴らさせていたのです。
日頃利用する地下鉄。そのさらに地下に潜んでいた、明かりを用いる知性を持った、醜悪な怪物。
それを――『食屍鬼』を目撃した探索者は、0/1d6正気度を失います。
彼は動揺する探索者たちを尻目に左側の通路へと進むと、そのままゆっくりと立ち去って見えなくなってしまいます。
探索者が『EV:B』のポイントに足を踏み入れると発生します。
怪物の歩いてきた方角へ向かい、その奥を確認した探索者はとんでもない光景を目にすることになります。
そこには先ほどと同じ怪物が、4人。そして……右側の隅っこに、信じられないもの。
「むにゃ……斉藤さん、あなたの肌は意外とひんやりしてるんですねぇ~……うふふ……」
……行方不明になった、武田。すっかり『出来上がった』彼が一匹の怪物の膝の上に頭を乗せて、気持ちよさそうに眠りこけているのです。
怪物は涎を垂らしてはいるが、幸運にもそれが武田の顔に当たることはなく、怪物自身の喉仏を通り、胸元をてらてらと輝かせていました。
探索者たがが眺めていると……怪物たちは耳障りな早口で『きぃきぃ』と鳴いて意思疎通すると、鋭いカギ爪を示し合わせて醜悪な笑みを浮かべます。
こちらへ向かってくる様子はなく、視線は赤ら顔で呑気に眠りこける武田へ向けられています。
一見悪ふざけのようなシーンですが、
『武田が即座の危険に晒されておらず、ある程度落ち着いて探索して良い』
『しかし、油断ならない危険な状況である』……ことを伝えるためのイベントです。絵面が死んでいますが、許してください。
探索者が『Ev:C』のポイントに足を踏み入れると発生します。
《聞き耳》を行う必要すらなく、通路の奥(Ev:Cの南側)から甲高い悲鳴を聞き取るのです。
それは人間に似ていますが、ケモノの叫び声のようにも聞こえます。
探索者が南の方を向けば、暗がりの中に怪物の姿を――先に見た怪物、それを持ち上げる更なる異形の姿を認めます。
それは黒い柔毛に覆われた、隆々とした太い腕を持っていました。
おぞましいことに肘から先は二股に別れ、その先にはどす黒いもののこびりついたカギ爪がついています。
股下こそ人間のそれと大差ないありませんが、頭が垂直に真っ二つに裂け、その両端には巨大な黄色い牙がめぐらされており、顔らしき部分の両端には、5センチほども突出したピンク色の目玉が輝いていました。
そして何より恐ろしいのは……明らかに人間の範疇から逸脱した、その体躯。
それの体長は成人男性の3倍ほどもあり、腕の長さだけで探索者の身長をゆうにオーバーしているのです。
……あの牙は何を喰らい、あの爪は何を引き裂いてきたのか?
そんな想像が脳裏を過った瞬間、こらえきれないほどの原始的な恐怖が湧き上がります。
……『ガグ』と呼ばれる四本腕の化け物であり、食屍鬼たちを利用し、人間を喰らおうとする怪物です。
彼はたわむれに食屍鬼の一匹を頭上に持ち上げ、おやつにしようとそれの四肢に力を込めます。
食屍鬼の悲鳴は即座に絶叫へと化し、それが断末魔に変わるのもそう遠くはありません。
ガグは、肢体を4つに引き裂かれた食屍鬼を貪ると、探索者たちの方をひと目見やり、それから壁に向けて歩き出します。
探索者の位置からは見えませんが、この壁には刻印が掘られており、彼の体を住処である『幻夢境』の地下洞窟へと送り返しているのです。
この凄惨な光景を目撃した探索者は、《0/1d8》正気度に加え、《1/1d4》正気度を喪失します。
前者はガグを目撃したことによる、後者は殺害光景による喪失です。
探索者が殺害地点へ向かうと、そこには撒き散らされた血液と、壁に彫り込まれた謎の刻印(『EV:C』から見て南端の位置です)があります。
この刻印に触れることは非常に危険です。なぜなら、これに触れた途端、探索者の体が『幻夢境』の地下洞窟へと飛ばされてしまうからです。
数十匹のガグに囲まれれば、助かる可能性などありません。キーパーは迂闊に触れないように注意を促す必要があるでしょう。
刻印には保護の呪文も施されており、干渉(削ろうとする、水をかける)などは無意味に終わってしまいます。
探索者が『Ev:D』のポイントに足を踏み入れると発生します。
小部屋のようになった洞窟の奥から、奇妙な話し声が聞こえるのです。
すぐに隠れ、息を潜めて耳をこらせば、以下の内容を聞き取ります。
・探索者たちの侵入には、今のところ気づいていない。
・酒に酔った男を攫ってきた。彼は4人の同胞の監視下においてある。"下拵え"が済んだら、"やつ"に喰わせよう。
・やつが満足したとしても、二度とこちらに来ないことにはならないだろう。
その内自分たちも餌食になりかねない。ここから逃げ出すにも、他の住処は人間の手が入って使えなくなっている。
・その内、やつは地上へ向かうだろう。だが、そうなるのは地下に餌が無くなった後。自分たちが亡くなった後だ。
・やつさえ死ねば、他の怪物はこちらに興味はないようだ。いっそのこと……だが、単純な力では束になっても敵わない。
・片側の食屍鬼は『人間はどうして、思考を鈍らせる薬物なんぞ飲むのか』と言い、対側は『……"今は"もう、わからんな』と返す。
……会話が終わると、彼らは『下拵え』に必要な器材を探しに、梯子を登った先の下水道から、ゴミ捨て場へと上がっていきます。
彼らの爪では余計な肉まで剥ぎとってしまうので、きちんと道具を使わなければならないのです。
しばらくの間は帰ってこないので、探索者がこっそり相談する場所には持って来いでしょう。
探索者はどのような考えに向かうのでしょうか?
このまま逃げてしまうにせよ、腹を据えて怪物を倒すことに決めるにせよ、相談が必要でしょう。
無論これは、協力者にも同様です。
鉄道の設備を使うのなら、同行している小此木へ協力を求める必要がありますし、食屍鬼たちに協力を求めるのなら、彼らと話をする必要があります。
食屍鬼たちに協力を求める場合、以下の条件を満たすことが必要です。
・協力を求めた対象が、上記の2人のどちらか(あるいは両方)である。
・ガグを葬るための手段を提示出来る。ただし、それは食屍鬼が試したことのない手段でなければならない。
・《説得》ロールに成功する(キーパーは探索者たちの説得内容に応じ、補正を与えること)。
条件を満たせば、彼らのうち一人が探索者を《かばう》ために同行し、武田の解放にも同意してくれます。
彼らの主食は生ごみや小動物です。人間は上等な食料ですが、迂闊に手を出せば破滅を招くことを彼らは知っているのです。
ガグを葬るための手段、それにもっとも容易なのは、保線用の列車を使うことでしょう。数十トンの鉄の塊にぶつかられ、生きていられる生物は存在しません。
また、ガグや刻印についても知っていることを教えてくれます。内容は以下のとおりです。
・あれは『ガグ』と呼ばれる存在で、四本の腕を振るう肉食性の凶暴な怪物。『幻夢境』なる、この世ならざる異界の怪物だ。
・強靭な肉体、単純な暴力だけがあれの武器だ。だから、我々では勝つことが出来ない。
腕に当たればまとめて引きちぎられ、噛みつかれればそのまま腸を食いちぎられる。
やつが壁を殴って作り出した、散弾めいた土砂。それに全身を撃ちぬかれて絶命した同胞すらいる。
・巣穴を求めて、地下を掘り進んでいる際、地下に作られたこの空間を掘り当てた。
人間の(子供の)遺骨が多く含まれていたことから、恐らく誰かが生き埋めにしたのだろう。
掘り当てた途端、圧縮されていた怨念が『幻夢境』と呼ばれる異空間とのゲートを開き、そこから怪物たちが現れた。
ほとんどは帰っていったが、あのガグのように自由に行き来出来るゲートを作ったものもいる。
・ゲートは一度に一人のみが使え、使っている最中は他のガグはこちらへ来られない。
現世での肉体を構成するには、ゲートの力が必要不可欠だからだ。誰も帰らなければ、二度とゲートは使えなくなる。
・刻印には、様々な『保護』の呪文が使われている。物理的な手段(水、火なども含む)はすべて試したが、消すことは出来なかった。
また、刻印に危害が与えられると、一種の警報装置のような反応が起こり、ガグが向こう側から現れる。
・我々は地上へ出られないし、人間を襲うつもりもない。そんなことをすれば、即座に"狩られる"のは明白だからだ。
・政府も行政も、一部のものは我々の存在を知っているし、秘密裏に対策機関も存在する。
『人喰いの怪物が地下世界に潜んでいる』などということは、混乱を避けるために公表はされないが。
・我々の痕跡を認めれば、一部のものには我々のことが分かるだろう。
多少荒っぽい手段で怪物を葬り去っても、後のことを心配する必要ない。事件は暗がりの中で処理されるだろう。
・(人間に詳しい理由について尋ねれば)……今はもう、私は名もない怪物の一匹だ。それで十分だろう。
交渉が決裂した場合、彼らから協力を得ることは出来ません。
6体の食屍鬼と戦闘となり、自力でガグを葬る手段を果たせなければ、(15)のノーマルエンドへ移行します。
ガグに戦闘を仕掛けることに決めた場合、こちらへ分岐します。
投石などで刻印を攻撃すれば、ガグはそこから現れます。
探索者たちは列車の到着までガグを惹きつけ、地上へおびき寄せなければなりません。
ガグは探索者たちを追いかけて屠ろうとするため、おびき寄せることは容易です。
列車は『10ラウンド』後に到着します。ラウンド終了時にガグが線路上にいれば、彼を即死させることが可能です。
探索者が身を切って囮となるのは良い選択です。
ガグの敏捷は屈強な成人男性のものと大して変わりません。
《回避》に専念し、無事に線路の上に誘導できれば、後は保線車両が来るのを待つのみでしょう。
ただし、車両を呼ぶためには、小此木にトランシーバーで連絡してもらわなければなりません。
当然、地下では連絡がつかないため、彼だけは先に洞窟から出ることになるでしょう。
通信が繋がった後も、高木への《説得》または《言いくるめ》が必要となります。
口下手な小此木が一人で上司を説得するのは困難です。誰か話し上手な探索者が付いて行ってあげると良いでしょう。
ここでも、探索者が地下の怪物の話に信憑性を与えることが出来れば、プラスの補正を適応します。
洞窟内のいくらかの壁は、探索者を逃がすための障害物として機能します。
ただし、それは絶対のものではありません。ガグの辣腕にとって、それは邪魔な木の枝程度の役割しか果たさないのです。
ガグの移動時に、彼が黒塗りのマスと接触した場合、1d3+7d6のロールを行います。
18以上の出目が出れば、破壊は成功です。土塊が爆音とともに吹き飛び、黒塗りマスから直線上2マス以内の探索者への遠距離攻撃となります。
この遠距離攻撃のダメージは3d3ポイントです。さらに、《回避》に成功しても細かい土砂までは避けきれず、1d3ポイントのダメージを受けます。
また、彼の攻撃時、洞窟が衝撃に耐え切れず、落盤を起こす可能性が常にあります。1d100をロールし、出目が75以下であれば、落盤現象が発生。
X軸の2d6ダイス、Y軸の2d6ダイスを振り、出た目の位置に黒塗りのマスを配置します。
地図の範囲外ならば何も起こりませんが、もし不運な探索者が同じ位置にいた場合、《幸運》または《回避》による判定を行います。
成功すれば瓦礫を回避できますが、失敗すれば土砂に飲み込まれてしまいます。
1d8のダメージを受け、他の探索者、または食屍鬼にSTR6との対抗で成功してもらわなければ行動は出来ません。
食屍鬼が味方になっている場合、彼らも救助に協力してくれるでしょう。ガグが間抜けを貪り始めれば、作戦の時間に間に合わなくなるかもしれないからです。
食屍鬼たちの協力を得られていなければ、《DEX*5》で1ラウンド掛けて瓦礫を乗り越える必要があります。
無事に縄梯子まで逃げられれば、1Rを消費して線路のマップへと移動が可能です。ガグもすぐに後を追います。
彼が縄梯子を登って出られるのか? という疑問は杞憂に終わります。
そんな疑問を浮かべた探索者たちの前で、ガグの爪は水面に突き入れたように垂直に床板を貫通し、崖にぶら下がるように床を掴むと、腕の力だけでそのまま体を持ち上げて登るのです。
探索者は車両が通過するまでの残りのラウンドを、ガグを引き付けるために使わなければなりません。
無事に10ラウンド後、ガグを右の線路上に乗せられた場合に発生します。
保線用車両が風を切って到着し、異物を認識して警笛を鳴らすと、ガグは咄嗟に全ての腕を眼前で交差し、防御反応を取ります。
自然界の存在であれば、この防御を破れる生物はいなかったかもしれません。……ですが、それはあまりに規格外の存在でした。
車両の衝突によるダメージは『6d6*11』です。ダメージを受けたガグが肉片となり、トンネル中に撒き散らされると、車両はようやく進行を停止します。
正面のガラスが割れ、車体も大きく凹んだ無残な状態ですが、少なくとも今日の分の整備は果たせる状態にあるようです。
武田がまだ地下にいる場合、食屍鬼たちは彼を(先の2人でなければ残念そうに)ちゃんと返してくれます。
小此木と高木は事後処理に忙殺されることになるでしょうが、裏から救いの手が回されたことにより、彼らが減俸以上の処分を受けることは無いでしょう。
食屍鬼たちはガグの肉片を舐め終えた後、住処を求めてどこかへ去っていきます。
彼らが探索者たちと出会うことは、恐らくもう二度とありません。
地下での戦闘によって誰かが殺害された場合、死体には警察による捜査の手が及びます。
……探索者たちへ疑いの目が向くことは無いでしょうが、話を聞くために警察は一時、探索者たちを拘留するかもしれません。
ともかく、危機を脱した探索者たちは《1d10》の正気度報酬を得て、武田が生存していればさらに+1の報酬を得ます。
それにて一件落着。シナリオは終了です。
いわゆるノーマルエンドへの分岐です。
探索者が武田を連れ、怪物に目をくれず地下から脱出しようとすると分岐します。
4体の食屍鬼はいずれも戦闘体勢にはあらず、くつろいだ状態です。
不意打ちを掛けた場合、探索者に先に1ラウンドを与え、食屍鬼たちの《回避》が不可能な状態で攻撃させます。
1ラウンド終了後は通常通りに行動が可能です。探索者が戦闘に勝利すれば、無事に脱出出来るでしょう。
……ですが、それは仮初の勝利に過ぎません。
以降に探索者、あるいは警察が地下へ向かっても、そこはもぬけの殻です。
探索者たちは以後、あの怪物がどこか別の地下から現れるかもしれない、という恐怖に怯えることになります。
それがいつなのか、はたまたいつまでも来ないのかは分かりません。
しかし、伊津坂駅近辺で行方不明者が出るたび、『もうすぐ地下に食料が無くなり、腹を空かせた怪物が登ってくる』という恐怖がこみ上げるのです。
暗がりに光を当てる機会は失われました。正体不明の影は、彼らの命がなくなるまで、永久の恐怖として君臨し続けるでしょう。
ペナルティとして1/1d10の喪失が発生し、シナリオはそこで終了します。
暗闇でのかくれんぼ。ガグとの鬼ごっこ。
最後は列車が全てを吹き飛ばすという、割とシンプルな構造のシナリオ……だと思います。
何かありましたら、Web拍手やツイッターの方へご報告お願いします。
プレイ感想なども送っていただけると喜びます。